アンの青春』(アンのせいしゅん、原題:Anne of Avonlea、アヴォンリーのアン)は、カナダの作家L・M・モンゴメリが1909年に発表した『赤毛のアン』の続編。16〜18歳のアンを描いている。

前作では、アンは手違いでカスバート老兄妹に引き取られた夢見がちな孤児の女の子という立場で、グリーンゲーブルズの家での描写が中心であった。しかし、『赤毛のアン』の終章でマシュー・カスバートの死を受け、アンは、一人となったマリラを支える。また新任教師や村の改善委員も引き受けるなど、アヴォンリーの地域社会に貢献する立場に成長する。学費を貯めて一度は諦めた大学進学を果たし、次作の『アンの愛情』へと続く。

あらすじ

アンは村の改善協会を立ち上げ、アヴォンリー村を良くしようと奮闘するが、なかなか良い成果にはつながらない。アンは教師になり、子供達を教えるようになる。マリラはデイビーとドーラという双子を引き取って育てる。作家のモーガン夫人を家に招待する。ミス・ラベンダーと出会い、ロマンスを成就させる。学費を貯め、さらに教育を受けるために大学に進学する所で、本作は終わる。

登場人物

アン・シャーリー (Anne Shirley)
本編の主人公。細身の長身、灰色の目を持ち、想像力が豊か。アンが美人かどうかは意見が分かれている。
マリラ・カスバート (Marilla Cuthbert)
アンを引き取ったカスバート兄妹の妹。成長したアンに代わり、本作では6歳半の双子を育てる事になる。
デイビー・キース (デイビッド・キース David "Davy" Keith)
マリラが引き取った双子の男の子の方。父は幼児の時に死亡し、母メアリーはそれ以来病気がちだったため、しつけがされていない。マリラはメアリーとは何ら親戚関係にないが、夫の方とは三従兄弟姉妹(みいとこ)同士であったため、メアリーが亡くなった際に、メアリーの兄弟が双子を引き取るまでの期間、マリラに預けられる事になった。母が言う通り、大変ないたずら小僧で、問題を次々に起こす。
ドーラ・キース (Dora Keith)
双子の女の子。母の言う通りのとても良い子。
リチャード・キース (Richard Keith)
双子の叔父。ブリティッシュ・コロンビアに住んでいた。結婚したら甥と姪を引き取るつもりであったが、病気で結婚は延期となり、もうしばらく双子を預かってくれるように頼む。結局は結核で亡くなり、双子が成人するまで貯金をマリラ・カスバートに信託し、利息を養育費に充てるように遺言する。
J.A.ハリソン (Mr. Harrison, James A. Harrison)
隣家が転居にて売り出した農場を購入して、アヴォンリー村に一人で来た男性。家は散らかし放題で、食事時間は決めておらず、食べたいときに食べる変わり者という評判で、ジンジャー(生姜)という名の、辛辣な言葉を喋るオウムを飼っている。アンたちは、てっきり独身だと思っていたが…。
レイチェル・リンド夫人 (Mrs. Rachel Lynde)
相変わらずアヴォンリーの情報局である。病気の夫に手厚い看護をする。本作で寡婦になる。
トマス・リンド (Thomas Lynde)
妻任せの控えめな夫だったが、病気になり、妻レイチェルに感謝の言葉を述べて亡くなる。
ギルバート・ブライス (Gilbert Blythe)
学校は違うものの、同郷の教師仲間で、村の改善委員会でもアンと接点があり、友人としては信頼されている。終盤にミス・ラヴェンダーの結婚式に出席し、共に幸福感を味わうアンに、初めて友情以上の自分の本心を見せるが、2人の恋の行方は次作に持ち越しとなる。
ダイアナ・バーリー (Diana Barry)
アンと終生の友情の誓いをした間柄で、本作でも堅い友情を保っている。フレッド・ライトからプロポーズされ、婚約する。
プリシラ・グラント (Priscilla Grant)
クィーン学院時代の同級生。カーモディーの学校を教える事になる。
ルビー・ギリス (Ruby Gillis)
アンの友人で、美しさを誇る金髪の少女。思いを寄せる男性には不自由しない。ネルソン・アトキンスから完璧なプロポーズの手紙を受け取り、心が揺れ動いたが、偶然見かけた恋愛指南本に同じ文面がある事を知って、形容し難い気分になり、痛烈な断りの手紙を書き送った。
チャーリー・スローン (Charlie Sloane)
本作でも影が薄いが、ギルバートの恋敵と見なされており、匿名のゴシップ記事の筆者ではないかと噂された。
ポール・アーウィング (Paul Irving)
アン同様に、空想の世界と行き来できる住人。贔屓するのは良くないと思いつつも、アンはポールを話の合うお気に入り生徒と見てしまう。
スティーブン・アーウィング (Stephen Irving)
ポールの父親。9歳のときに6歳のミス・ラヴェンダーと結婚する事を決意し、25年前には婚約を交わしていたが、突然に破局し、米国に渡り、そこで家庭を持ち、アヴォンリーにはずっと帰って来なかった。
ミス・ラヴェンダー (Miss Lavendar, Lavendar Lewis)
石造りの家(山彦荘)に住んでいる、素敵な中年の独身女性。アンとは歳の離れた友人となる。25年前にステファン・アーウィングと口論になり、仲直りに訪れた際に、すねて彼を許そうとしなかったために、長期に渡り彼を失う事となる。
シャーロッタ4世 (Charlotta the Fourth, Leonora Bowman)
ミス・ラヴェンダーの所で働いている女の子。ミス・ラヴェンダーは母亡き後、家を一人で切り盛りできず、さりとて大人の家政婦を雇える資力も無かったので、ボウマン家の女の子を料理と洗濯の手伝いに雇っている。本名はレオノーラ・ボウマンだが、最初にミス・ラベンダーのところに働きに来た長姉が「シャーロッタ」という名前であったため、彼女の後に働きに来たボウマン家の姉妹は、皆シャーロッタと呼ばれている。レオノラも同様で、彼女は4人目である。

アン・シリーズ一覧

各タイトルは村岡花子訳に準拠する(『アンの想い出の日々』のみ、その孫である村岡美枝訳に準拠する)。通常、最初に上げられている9冊の本をアン・ブックスと呼ぶ。アン・ブックスをより狭い範囲に呼ぶ場合もあるが、9冊の本は、アンを主人公とするか準主人公とする「アンの物語」である。これに対し、追加の2冊は短編集で、「アンの物語」と同じ背景設定であるが、大部分の作品はアンとは直接に関係していない。アンが端役として登場したり、その名前が言及される短編もあるが、総じて、題名が示す通り、「アンの周囲の人々の物語」である。 なお、4冊目「アンの幸福」の原題はイギリス版とアメリカ版で異なり、イギリス版ではAnne of Windy Willows、アメリカ版ではAnne of Windy Poplarsで、内容も少し異なる。

日本語訳一覧

  • (1955年) 村岡花子訳 - 新潮社。 ISBN 978-4102113028
  • (1958年) 中村佐喜子訳 - 角川文庫。 ISBN 978-4042179023
  • (1976年) 神山妙子 - 旺文社。(絶版)
  • (1990年) 掛川恭子 - 講談社。
    • 文庫版: ISBN 9784062750943
    • 完訳クラシック版: ISBN 978-4-06-270402-1
  • (1990年) 石川澄子訳 - 東京図書。
    • 『アヴォンリーのアン 上』 ISBN 978-4-489-00328-8
    • 『アヴォンリーのアン 下』 ISBN 978-4-489-00329-5
  • (1990年) きったかゆみえ - 金の星社。 ISBN 978-4-323-01076-2
  • (1990年) 谷詰則子 - 篠崎書林。 ISBN 978-4-7841-0487-1
  • (1991年) 茅野美ど里訳 - 偕成社。 ISBN 978-4-03-651870-8
  • (2001年) 松本侑子 - 集英社。
    • 文庫版: ISBN 978-4087478679
    • ハードカバー版: ISBN 978-4087752885

派生作品

テレビ映画

  • (1975年) Anne of Avonlea BBC TVのミニシリーズ版
  • (1987年) 『続・赤毛のアン/アンの青春』 ミーガン・フォローズ主演、ケヴィン・サリヴァン監督

コミック

  • 『アンの青春』いがらしゆみこ、くもん出版、1998年 ISBN 978-4774301709

脚注

関連項目

  • L・M・モンゴメリ
  • アン・ブックス
  • アボンリーへの道
  • プリンスエドワード島

外部リンク

  • プロジェクト・グーテンベルク インターネットで読める原書。
  • プロジェクト・グーテンベルク インターネットで聞ける原書の朗読。
  • 赤毛のアン記念館・村岡花子文庫(翻訳者の村岡花子の記念館)
  • 赤毛のアン電子図書館 - ウェイバックマシン(2004年9月24日アーカイブ分)(翻訳者の松本侑子の関連ページ)

【赤毛のアン一挙放送】スターチャンネル独占プレミア放送記念映画で観る “赤毛のアン” SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)

映画チラシサイト:続・赤毛のアン アンの青春

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『赤毛のアン』(ル-シ-・モ-ド・モンゴメリ-,掛川 恭子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部